長野市総務部職員研修所 所長 小池啓道 様

働くことは「幸せになるための条件の一つ」

一貫した理念っていうのは「職員の皆さんがいきいきと働ける職場を作りたい」っていうことなんですよね。

長野市役所で長年勤める小池さんにお話を伺いました。

プロフィールを教えてください。

長野市役所の職員研修所という、市役所職員に対して研修をする部門の所長をしています。若い職員の皆さんには社会人としてのマナー、公務員として必要な法律・法令ですね、あと市役所の仕組みとかを研修をします。役職が上がってくるとそれぞれの立場によって求められるものや役割がちょっと違ってきます。「市役所を運営する」っていうような考えになってこないと困ることが出てきます。

今の課では、課題を解決するというところで研修を行っています。市役所で最初に入ったのは市民税課というところ。税金の部門で、住民票の発行などの窓口業務もやりました。それと、道路や水路の責任や法律を管理する仕事。長野オリンピックでの選手村勤務で宿泊施設の管理とか。一番長く勤務したのは庶務課で、庁舎や建物の管理です。建設事務局というところで新しい庁舎の建設や引っ越しを担当させて頂きました。

一般的に研修というと、仕事のやり方を学んだり、スキルをアップしてもらうものですが、私がやる方の研修っていうのは「働いている人が幸せだと思う事ができるように、幸せを追求する研修を」という思いで仕事をしています。

これが自分の仕事だと思った経験やストーリーはありますか?

どの仕事もやっぱり、やって充実感があるかどうかだと思うんですよね。幸せに働くってその仕事が自分に向いているかどうかっていうことよりも、好きになれるかっていうこともあるのかなぁと思うんですよ。例えば私が初めて道路・水路の管理で最初にやったのは境界立ち合いの仕事でした。土地の境界の話なので、この辺りが境界じゃないかと決めてお話するんだけど時間がかかると地主さん達も「いつまでやってるんだ!」と毎日結構怒られるんですよ。実際すごく混んでて、申請しても2か月待ちくらいだったかなぁ…。だから「申請しても全然来てくれない」ってしょっちゅう言われたし、こっちもそうは言われても限界でしたから…。でもまぁ、面白いといえば面白い仕事で、「土地っていうのはそういう制度でできてたのかぁ」と知らなかった事がたくさんあり、全部勉強になりましたね。

写真:長野市庁舎

市役所にいたからこそできた仕事。どんな仕事もやっててよかったなと思う。

苦労したことはどんなことですか?

個々に言えばやっぱりやだなぁって思ったのは、長いクレームとかですね。とりとめのないクレームや、クレームのつもりじゃないんだけどクレームだって人もいるし、いじめるのが好きでやってくる人もいるんですよ。ほんとに、そういう相手するのはすごく大変だなぁって思いますね。お話聞くところは聞くけど、同じ堂々巡りとか毎日訪問されるとかってなってもそれは困っちゃうなぁと思うこともありますね。

時間的に大変だったといえば、教育委員会とか管理課もそうだけど、勤務時間長かったですね。市役所入って最初は市民税課でしたけど確定申告がありますよね。4月5月はピークで忙しくて入って2日目からはずっと残業でした。

市役所の仕事っていうと、時間と休みがしっかりしてそうなイメージありました。

そうですね、やっぱり時期とか部署によってどうしても難しい時はありますね。

今、制度が細かくなってきてどんどん仕事が増えていますので。細かくなると、勉強して適応するのが増えるから手間もかかっちゃうんですね。そうすると残業が増えるっていう。

仕事のスキルを上げる、皆さんにスキルをつけてもらう、もちろん慣れれば早くなっていきますけど。働いてて面白くないと能率上がらないんじゃないかって思う。だから仕事ではそういう充実感とか感じるとか、働いて良かったなって思ってもらえれば、多少の長い時間でも短く感じるとかね、辛くないとか。逆に短い時間でも嫌な仕事を続けてると気が滅入ると思うんですよね…。できるだけ前向きにいければなぁという思いを持って、研修を企画します。

やってて良かったと思うのはどんなことですか?

どんな仕事もやっててよかったなと思いますよ。
特に印象的だったのが、オリンピック選手村に勤務した事かな。市役所職員でなければできなかったことかもしれないし。普通に生活してれば気にしなかったこともあるので、こういう社会もあるんだなっていうのが分かり面白いなぁと思いますね。
最近だと台風の被害の時に約2か月間、避難所の運営っていうのをやらせて頂いたんです。これもほんとに貴重な体験で…。人の縁っていうのはすごく大きいなと思います。ボランティアのネットワークにも入ってたのでその仲間からも色々なボランティアを紹介してもらったり、困ってる時には応援してくれたし、人のつながりを感じますね。

幸せな働き方とは?

幸せな人の周りには幸せな人が集まる。

何かこれからやりたいことはありますか?

個人的に防災と環境の2つの分野に関心があります。

SDGsの話で、その目標の一つに地球環境があるんですよね。その中の一つが「気候変動に具体的な対策を」という大目標があって、大きい目標の下にターゲットといわれるもっと具体的なのがあるんですよね。

その中(ターゲット)の一つが、「すべての国において気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジデンス)及び多様適応力を強化する」って目標なんですよ。だからまさに今回の災害の原因の大きな一つは地球温暖化、気候変動。私が関心のある分野にすごく隣接しているんですよね。だからそういうこと(気候変動やその影響)を皆さんに知ってもらうということ、それから、災害に強くなるまちにしていきたいっていうのを、これから自分としては、仕事とはちょっと別になっちゃうんですけど、やってきたいなぁというふうに思っています。

そういう意味ではもうひとつ、エシカルって言葉聞いたことありますか?エシカルって言葉は、長野県知事さんが「あと4年くらいの間に認知率を100%にしたい」って言ってるんですけど、まだ相当大変なことだと思うのね…。簡単に言えば買い物での思いやりということです。フェアトレードとかを広げたい。あと、SDGs知ってますか?教科書にも載ってるけど知らない人多いから、でもそういうの知ってもらうっていうの大事だと思います。

全然仕事の話じゃないなこれ(笑)。

仕事とすると、今度部署変わっちゃうけど、やっぱり、皆さんが幸せに働いてもらえるようにっていう思いでやってきています。

今日せっかくの機会なので、幸福学を研究なさっている前野隆司先生のお話をしますね。市役所の話と外れてしまいますけど、私もすごく影響を受けてて、市役所にも来ていただいたし、幸せな人の周りには幸せな人が集まるんです。これが研究で分かってて、そういう人が増えてくると皆さん幸せになっていくかなって…!

幸せな人が幸せな人を呼び寄せるんです。

幸福学について教えてください

まず、幸せには二種類あるということです。

ひとつは、【お金・モノ・地位】っていうのはどんどん増えていかないと幸せを感じなくなっちゃう、長続きしない、一瞬のもの。(英語では Happy)

【安全・健康・心】は長続きする幸せ。well-being(ウェルビーイング)=幸福って言うんですが、心が平穏な感じとか。健康ってお金で買えないでしょ。

前野先生の研究に、「幸せになるための4つの因子」があります。

1つ目が自己実現(やってみよう)。嫌々やるより、やってみようと思ってやった方が楽しくないですか?

2つ目につながりと感謝(ありがとう)です。人からありがとうと言われると嬉しいですよね。

3つ目は前向きと楽観(なんとかなる)なんとかなると思ってやってみる、結果的にうまくいけば嬉しい。心配しながらやるとドキドキワクワクもしない。

4つ目がありのままに(独立と自分らしさ)。自分らしさを出せるってやっぱり幸せだと思うんです。

4つの因子が全部揃えば一番幸せなのかなと思うけど、自分はここがすごく強いというのがあるといいって前野先生はおっしゃってました。「笑顔を作るだけで幸せな気分が高まる」って何となく分かりますよね。作った笑顔だったとしても、だんだんもとの固いところが崩されていくわけです。形から入ってもだんだん幸せになっていく感じ。下を向いて歩くよりも上を向いて歩く方が幸せ度が上がるんですね。しかも、大股で歩いた方がいいらしいですよ。

4つの因子の中でも、実は2番目の因子(感謝・ありがとう)が一番大切で、ネットワークを広げるにもこれが重要。他の3つは自分に対してなのですが、これだけは外に向かって開いています。一番幸せを感じる。たくさん知り合いができると楽しくなっていくんじゃないかなと思います。私はネットワーク広がりました。周りの幸せな人が、「こういうことをやってるから一緒にやろうよ」とか誘ってくれて。そういうのは一つの財産だなぁって思ってますね。だから、何らかの形で皆さんもネットワークを広げていくと、お仕事の上でも全然違ってくるんだと思う。誰かが助けてくれるようになる。

大切にしている言葉で、Life is Bonus(ライフ・イズ・ボーナス)「生きていることは素晴らしい」。私が勝手に訳してるんですけど。ロブサン・センゲさんっていうチベットの首相、ダライ・ラマから政治を任された方にお会いした時に話していただいた言葉です。

「生きてるってことはすごく素晴らしい、命をもらっているのはボーナスだ」と命の貴重性といつ死んでも後悔しない生き方ということを言って頂きました。彼に会えたのも、ネットワークのおかげですよ。

あなたにとって働くとはなんですか?

幸せになるための条件の一つですかね。
幸せだと感じる条件っていくつかある、なにを幸せだと感じるかっていうことですけど、仕事はやらないと収入にもならない。だけど、「仕事をして皆さんの為になってるんだ、皆さんから頼りにされてるんだ」っていうのを感じると自分でもすごく嬉しい。最近でいえば避難所運営の最終日に皆さんに感謝の言葉を言ってもらえたのがとっても嬉しかったですね。この仕事をしなければたぶんそんなことは無かったと思いますね。
チベット仏教のマチウ・リカールさん世界で一番幸せな人と言われているんですが、「生きること・幸せなことっていうのは、他の生きているものを慈しむことだ」と言っているんです。あぁ、究極的にはそういうクリアな考え方はすごいなぁと思っています。
少しづつ無駄なものを取っていって、何が自分の心の平穏なのか?物とか仕事の成果だけじゃないなって。「ありがとう」と言われるのは本当に幸せだし、言う方も、助けてもらってお礼を言えるのは幸せだなぁって思います

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